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河地 有木
no journal, ,
近年の放射線計測技術を基盤としたイメージング手法は、生命科学研究において大きな発展をもたらしてきた。特に、生体内元素の動態を放射性トレーサで可視化する、いわゆるRIイメージング技術は現在最もホットな研究テーマの一つだと言える。このRIイメージング技術は、生命科学研究の中でも植物栄養の生理学的研究においても、大きなアドバンテージをもたらすものである。日本土壌肥料学会2010年大会で企画されたシンポジウム「植物の必須元素の栄養生理」において、おもにわれわれが開発してきたイメージング技術とその研究成果を紹介するとともに、植物栄養動態RIイメージング研究のあるべき姿を考察する。
鈴井 伸郎; 山崎 治明; 河地 有木; 石井 里美; 石岡 典子; 大山 卓爾; 藤巻 秀
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植物体内における亜鉛の動態をポジトロンイメージング技術により可視化する際に、これまではZnを自ら製造して用いてきたが、娘核種のCuがポジトロン放出核種である問題があった。本発表では購入可能なRIであるZn(娘核種Cuは安定同位体)にトレーサーに用いることで、亜鉛のポジトロンイメージングが可能であるかを検証した。400kBqのZnを含むトレーサー溶液をイネに投与し、PETISで撮像したところ、Znが根から吸収され、地上部へ輸送され、蓄積される動画像を得ることができた。さらに、異なるキャリア濃度(基質濃度)のトレーサー溶液を投与した際の動画像から、Znの吸収速度を算出し、ミカエリス・メンテン式を用いることで、イネにおける亜鉛の吸収特性(Km, Vmax)を評価することに成功した。
山崎 治明; 鈴井 伸郎; 河地 有木; 石井 里美; 伊藤 小百合; 島田 浩章*; 石岡 典子; 藤巻 秀
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本研究では植物の節における元素分配メカニズムの解明を目的とし、まず節の機能を人為的に阻害する実験系の確立を目指した。今回、その候補として植物の一部を局所的に冷やす試みを行った。ダイズの葉柄、及びイネの茎基部に局所冷却を施し、それぞれの葉にCOを投与した。次に、植物がCOを吸収・固定し、C-光合成産物として体内を移行・蓄積する様子を、PETISを用いてそれぞれ2時間撮像した。実験終了後、得られた動画像からダイズの節及びイネの茎基部におけるC放射活性の経時変化を算出し、局所冷却を行わなかった場合と比較した。その結果、局所冷却を行ったダイズ,イネでは、ともに節でのC-光合成産物の蓄積量に減少傾向が見られた。また、ダイズではC-光合成産物の節への到達時間に遅延が認められた。これらの結果より、局所冷却によって篩管内及び節での光合成産物の移行量が減少することが明らかとなり、節の機能を阻害する手段として局所冷却が有効である可能性が示された。
中村 進一*; 鈴井 伸郎; 伊藤 小百合; 石井 里美; 河地 有木; 石岡 典子; 頼 泰樹*; 服部 浩之*; 藤巻 秀
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これまでの研究で、植物の根に投与したグルタチオンが植物体の地上部へのCdの移行と蓄積を抑制することを確認している。本研究では本現象へのグルタチオンの影響をさらに検証するため、還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)を用いてCdの吸収実験を行い、それらがCdの移行と蓄積に及ぼす影響を調べた。実験にはアブラナを用い、Cd処理は10Mの濃度で2日間行った。同時にこれらの植物にグルタチオン処理(GSH, GSSG)を行い、収穫した植物の地上部・地下部におけるCd蓄積濃度をICP発光分光法により測定した。また、ポジトロン放出核種イメージング技術(PETIS)を用いて、それぞれの処理を行った植物におけるCdの移行と蓄積の様子をモニタリングした。収穫した植物の地上部に蓄積したCd濃度は無処理区では約400nmol/gDWであったのに対し、GSH処理区では約100nmol/gDWで、GSSG処理区では約300nmol/gDWであった。一方、地下部に蓄積したCd濃度は、約4,000nmol/gDWで無処理区とグルタチオン処理区の測定結果には、有意な差は見られなかった。また、Cdを用いたPETISによるCd動態の可視化の実験の結果も、GSHとGSSGがCd吸収の初期段階でCd吸収に異なる影響を及していることが明らかになった。